TPPと『漂着』

 新聞報道によると、この国がTPPに参加し関税を撤廃すると、食糧自給率は現在の40%から13%まで落ちてしまい、米は90%以上がつぶされてしまうということです。

 農業・雇用・地域経済を破壊する愚挙を、しゃにむに推し進めようとしている政府に対抗する有効な本が、昨年9月に刊行され、いま、静かなブームを巻き起こしている小檜山博『漂着』です。

  主人公健三の発言を紹介します。

 「食べ物は損得で作るものではない。儲からないけど人間が生きるためになくてはならないものだから作るというのが、食の自給の思想であり概念でしょう。国民が自分の国の人間が食うものを作るのをやめるということは、国が滅亡することなんだ」

「異常な科学の進歩と機械文明などによる地球の温暖化がいまの調子で進んで、世界的な天候異変、冷害や飢饉がつづいて日本が食い物を輸入できなくなったらどうするの。ま、俺たち百姓からみれば、この国の農業が無くなってしまったって、どうってことはないんだ。自分で作って食えばいいんだから、農民はぜんぜん困らないんだよ。だけとあんたたち都会人はどうするの、餓死するのかね。死ぬ覚悟があって国内の農業を切り捨てるんなら、ま、仕方ないけど。要するに、いま騒いでいる農業問題は、われわれ農民の問題なんかではないんだよ?あんたたち都会人の食糧問題なんだよ?あんたの命の問題なんだよ?わかってるの?そのこと」

作者は「あとがき」に、「これは現代における百姓一揆で、主人公はぼく自身だ」と書いています。その心意気が、直に伝わってくる作品です。

お知らせをひとつ。

小檜山博さんと岩見沢市北村の農家・富沢修一さんが出席するフォーラムが下記の日程で開催されます。

「日本の食と農業を考えるフォーラム」

と き 2月12日(土)13:30~16:00

会 場 札幌市教育文化会館(北1条西13丁目 電話271-5821)

資料代 500円

主催 「日本の食と農業を考える会」

共催 アグリ企画

協賛 札幌民主文学会・婦人民主クラブ札幌支部


2011年1月10日 会員M

2011年私は「今こそ戦争反対」

昨2010年のニュースとして報じられた中で、「尖閣列島」に関するものがたいへん注目度が高かったとの記事を目にしました。中国漁船の海上保安庁による拿捕に端を発した尖閣列島の領有権の問題です。中国漁船の振る舞いと日本政府の対応、さらに中国政府の反応、と続き漁船の行動を録画したビデオが海上保安庁よりインターネット動画サイトへの流出、のにぎやかな騒ぎが続きました。

私は新聞やテレビの大々的報道をいささかあっけにとられた思いで、読んだり見たりしていました。わりと単純でわかりやすい問題と判断したので、自分としては2010年の10大ニュースといったもののなかでは、低い評価でした。多くの国民の印象にそんなに大きく残ったのかということには、かえって驚いたものです。

年の終わりごろに起き、新聞、テレビなどの画一的垂れ流し報道があったというものですから、強い印象を国民に残したのはわかりました。しかし、どうとらえたかは吟味する必要のあることです。「目には入ったけれども、脳にとどくまでではない」との人たちもいるのではないでしょうか。

日米韓の結束でとか、日米同盟でとかという、論調で終始しました。菅内閣もそれ一本やりだったようです。北朝鮮による韓国の島への砲撃という休戦協定違反の暴挙あったことも、報道の一面性をさらに進めたように感じています。

それで思ったことは、いろいろな人たちとどう語り合うことが今必要なのだろうかということでした。特別考え深い人間でもない私ですから、複雑で難しいことを立て板に水というようなことはできません。何があるだろうとあれこれ思っていました。

年が明けてふと、「戦争反対」と言う問いかけを今することは、自分にはできることではないかと思うようになりました。

そう言ったら、どう反応するだろうか、いろいろ考えられます。その反応しだいで相手にあった会話を進めることにつなげられるかもしれない、ということなのです。

「今の状況を見ても、私としては戦争反対と声に出す時だとと考えています」が、2011年私の言い方とします。もし憲法九条や平和の問題、九条とあわせ考えていかなくてはならない二十五条に関することでの人との話の際、言ってみる今年のセリフにします。

日米「軍事」同盟肯定派の人、靖国史観を受け入れている人、北朝鮮に1発かますべきと思っている人、平和ボケを反省している人、こういう人たちからそれは違うこれこれでと、言ってもらいたいのです。当然友人知人の中にもいます。また九条の会の運動に個人としてかかわっていると知ると、びっくりしてなぜと聞く友人知人も珍しくありません。ひょっとすると、友人知人の多数派かも。

しかし仲良くつきあってきました。互いに距離をおく関係ではありません。私を九条の会のことで知っても変わりなくがみんなです。それがつきあいというものではないでしょうか。

他方、勇ましくマスコミなどで発言している「著名人」の数々は、さっきあげた類型にあてはまる人がいかに多いかも示しています。自分の発言に責任を持てるのか疑わしいものもけっこうあるのに驚かされますが。

現代国家で「総力戦」などできない、まして日本は一番無理な国との認識が、マスコミに登場している見識も地位もある人(?)からでてこない(でてもきわめて少ない)のはどうしてなのでしょうか。その方々には質問をぶつけてみたい気持にかられます。私でも日本は一番無理という点で、いくつかは理由があげられるのに。まずは「戦争ってたいへんなんですよ」からはじまって。

「軍縮と核兵器廃絶」がやはり21世紀の大道かなと考えています。その気持は九条の会とのかかわりのなかで強くはっきりとしてきました。「良い戦争、悪い戦争」も21世紀には通用しないのでは、ということも。

コケにされている国民のひとりだったと自覚したのはいいかげん年をとってからでした。一面的でバカな男だとはそのずっと前に自覚しましたが。とにかく条件反射人間だったのです。しょうがないからなるべくコケにされない市民になろうと思うようになったのです。ですから今年は「戦争反対」と言ってみることでやってみます。

2011年1月8日 会員UE

『吉里吉里人』の平和思想

 
 この正月、久しぶりに、井上ひさし『吉里吉里人』を再読しました。平和・農業・医療を3本の柱とする吉里吉里国の国是は、この作品が30年前の刊行であるにもかかわらず、光彩を放っています。
 吉里吉里を国家として認めてもらうためには、軍備を持った方が良いと言う意見に対して、指導者の一人であるゴンタザエモン沼袋老人は、以下のように説きます。

  「……吉里吉里国民は、はァ、正義と秩序ば基調ど為る国際平和ば誠実に希求す、国権の発動たる戦争ど、武力さ依っかがった威嚇又ァ武力の行使は、はァ、国際紛争ば解決する手段とすては、永久にこれば放棄すっと。この目的ば達っすため、陸海空軍、その他の戦力は、はァ、保持しない(略)。この条文ば日本国憲法から盗んだんだっちゃ(略)。独立の理由は千できかねぇ、万でもきかねぇ、億ほども、夜の空の星コの数ほどもあっこった。だども、皆の衆、その星コの数ほども有る理由の内で、キラキラて、一番星より明るく輝ぐなァ、この第九条す」

 「九条の会」呼びかけ人の一人として立ち上がった井上ひさし氏の思想の淵源が、ここにあるのだと、改めて実感しました。最後の戯曲『組曲虐殺』に、「虹にしがみつけ/あとにつづくものを/信じて走れ」と書き付けた氏の願いに応えるために、いま何をすべきかが問われているような気がします。

 蛇足ですが、作中に、吉里吉里はアイヌ語の「砂浜」からきたという箇所があります。たしかに、知里真志保『地名アイヌ語小事典』には、「kiri-kiri     キリキリ  《擬声語》歩けば キリキリと音を立てる砂浜」とあります。
 これほどまでに、この作品はアイヌとかかわりがあるのですが、「ひとつの国家のなかで、少数民族であるがために政府当局からないがしろにされている人たちの住む土地」に吉里吉里国立病院仕様の総合病院建設の計画が明らかにされる最後の場面では、いろんな諸国の民族への言及はあるものの、 アイヌ民族については一切ふれられていません。北海道人としては、いささか腑に落ちない次第です。

 2011年 1月5日 会員M

新年あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。


昨年は多くの方々からご支援ご協力をいただき 湯浅誠さんの講演会を開くことができました。
益々厳しさを増す社会状況の中 若々しい青年活動家の明日を切り開く希望に満ちたお話を多くの方々とご一緒に聴く機会をもてました。そのことをことを大変うれしく思っております。いろいろな方の感想反応、予想を超えるものがあったこと、改めて噛みしめています。

他の九条の会の方々とも、交流が進みました。いろいろ多彩な取り組みが札幌でも北海道でも全国でも行われていることに励まされています。

当会のブログもつくりました。会員のつぶやきを聞いていただくこと、また声もよせていただくこと(直接のコメントではなく、メールでですが)を期待しています。、これも輪とつながりをつくっていく一助になればとの気持ちからです。

自分たちができることをできる範囲で声をだすこと行うこと、続けます。どんどん進むよりは、時には立ち止まって胸に手を当てて考えていく歩み方で、進む姿勢です。

本年も、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

2011年1月5日 事務局