映画「山本五十六」を見て

正月に映画館に足を運び、東映映画「連合艦隊司令長官 山本五十六(やまもと・いそろく)」を見ました。見ごたえのある映画だったというのが私の感想の第一です。端的に言って「今の目・今の理解から描いた1941年ー1945年の日米戦争と海軍軍事指導者のひとり山本五十六」といえるでしょう。敗戦後に新聞記者が焼跡の東京で自問するラストシーンにもそれが現れていると受け止めました。ていねいに作られた検証に耐える内容の映画といえるのではないでしょうか。

月刊誌文藝春秋1月号に、原作者半藤一利さんが、「日本はどこで間違えたか」への寄稿者のひとりとして、また映画の山本五十六役を演じた主演俳優役所広司氏との対談「山本五十六の『人指し指』」にも対談者として、映画や山本五十六に関連して発言していました。たまたま知ったことになりましたが、見ていない方が映画をうかがい知る意味で、ご紹介します。

「この1ヵ月後10月14日、山本五十六聯合艦隊司令長官が天を仰いで吐き棄てた。

『実に言語道断だ。もうこうなった以上、最善を尽くして奮闘する。そうして長門の艦上で討死するだろう。その間に、東京あたりは3度くらいまる焼けにされて、非常にみじめな目に会うだろう。そうして、結果において近衛首相だのなんかが、気の毒だけれども、国民から八裂きにされるようなことになりゃあせんか』

この予言はすべて当たった。」(「最悪の金曜日」ー1940年9月13日 122ページ)

「役所『時代についての知識があれば、この映画を深く観ることができるでしょうね。』

半藤『そのあたりは原作本「聯合艦隊司令長官 山本五十六」にわかりやすく描いたので、いい手引き書ににはなっていると思います。』

役所『攻略本って感じですね(笑)。』

半藤『読んでから映画館に行ってくれ、と言いたくなります(笑)。そうすれば役所さんの演技が胸に滲みてきますよ、きっと。』」 (山本五十六の「人差指」 275ページ)

考えさせる内容、真剣な問いかけが含まれた映画と私は思いました。描ききれなかった点があるだろうことは確かですが、映画のことですから何が何でも詰め込めるものではないでしょう。監督、シナリオそれぞれも努力した結果が現れていると作品ではないでしょうか。

現日本国憲法、とりわけ九条を評価し大事にしている半藤さん、それは彼自身の長年にわたる探求の結果でもあります。「悲劇の人 山本五十六」とも言える彼に注ぐ目も、情理を尽くしているものを私は感じます。

作品の評価は見る人さまざま、ご覧になってそれぞれの受け止め方をしていただきたいものと思いました。

2012年1月14日 会員UE