安倍晋三首相の戦没者追悼式式辞に思う

麻生太郎副総理の「改憲はナチスに学べ」発言に関して、野党議員からの質問主意書が出されました。それに対する内閣の答弁書は、本人の事後弁明を回答しただけのものとマスコミは報じていました

その後、8月15日戦没者追悼式安倍晋三首相「式辞」が、内外の耳目を集めています。マスコミ報道で私も知らされました。ご本人は、靖国神社に参拝する代わりに自民党総裁として玉串料を奉納、現職閣僚の参拝はかまわないとしました。その考えにふさわしい式辞のようです。

8月15日北海道新聞夕刊に掲載された式辞全文は以下のとおりです。

安倍晋三首相式辞全文
『天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、戦没者のご遺族、各界代表多数のご列席を得て、全国戦没者追悼式を、ここに挙行いたします。
祖国を思い、家族を案じつつ、戦場に倒れられたみ霊、戦火に遭われ、あるいは戦後、遠い異郷に亡くなられたみ霊のご前に、政府を代表し、式辞を申し述べます。
いとしいわが子や妻を思い、残していく父、母に幸多かれ、ふるさとの山河よ、緑なせと念じつつ、尊い命をささげられた、あなた方の犠牲の上に、いま、私たちが享受する平和と、繁栄があります。そのことを、片時たりとも忘れません。
み霊を悼んで平安を祈り、感謝をささげるに、言葉は無力なれば、今は来し方を思い、しばし瞑目し、静かに頭を垂れたいと思います。
戦後わが国は、自由、民主主義を尊び、ひたすらに平和の道をまい進してまいりました。
今日よりも明日、世界をより良い場に変えるため、戦後間もないころから、各国・各地域に、支援の手を差し伸べて参りました。
内にあっては、経済社会の変化、天変地異がもたらした危機を、幾たびか、互いに助け合い、乗り越えて、今日に至りました。
私たちは、歴史に対して謙虚に向き合い、学べき教訓を深く胸に刻みつつ、希望に満ちた、国の未来を切り開いてまいります。世界の恒久平和に、能うる限り貢献し、万人が、心豊かに暮せる世を実現するよう、全力を尽くしてまいります。
終りにいま一度、戦没者のみ霊に平安を、ご遺族の皆様には、ご健勝をお祈りし、式辞といたします。』

北海道新聞15日夕刊記事では、例年の式辞にある「不戦の誓い」がなく、1994年の村山富市首相の式辞以来の「アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」などとの表現もなかったと報道していました。悼んでいるようで、じつは何も語っていないのではないかと、私に疑いを持たせた文章でした。残念です。北海道新聞などの指摘、適切な内容と感じています。そのような首相発言がなされることが良いわけはありません。

ブログ「五十嵐仁の転成仁語」8月14日付け(ブロゴスにも記載)に次の記述がありました。
『「日本に生まれた子どもたちが、この日本に誇りを持てる国に作っていくのが、私の大きな目標だ。このための教育の再生、さらには将来の憲法改正にむけて頑張っていく、これが私の歴史的使命であると思っている。」
安倍首相は、12日夜山口県長門市で開かれたみずからの後援会の会合で、こう発言して「憲法改正」に向けての決意を表明したそうです。』

安倍首相言う「憲法改正」の内容、今の自民党憲法改正草案そのものなのでしょうか。そうであれば安倍流「誇りの持てる国」は、私にはたいへん偏っている復古的なものと考えます。

いまこそ、自らの率直な意見を、場をわきまえたうえで、ていねいに言っていく時なのでしょう。さまざまな人たち、安倍氏麻生氏の言動をよしとする人たちとも、こつこつと。

同じ新聞紙上に、はるかに追悼の気持ちにあふれた文章が併記されていました。それも紹介します。

天皇陛下お言葉全文

『本日、「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新にいたします。
終戦以来既に68年、国民のたゆみない努力により、今日のわが国の平和と繁栄が築き上げられました。苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨は今なお尽きることがありません。
ここに歴史を顧み、戦争の惨劇が再び繰り返されないことを、せつに願い、全国民と共に、戦陣に散り戦闘に倒れた人々に対し、心から哀悼の意を表し、世界の平和とわが国の一層の発展を祈ります。』

2013年8月18日 会員UE